議論研究の展望

 灯台もと暗し.
 これまで情報工学経済物理学とかっていう新しい分析技術をベースにした研究の持つ可能性に惹かれてきた訳ですが,そういう新しい研究手法を活用するのは良いけれども,それは一体何学であって,僕は一体どこへ向かうのか?と若干不安でもありました.でも,実はすばらしい理論的基盤が心理学にありました.生態心理学です.つまり,アフォーダンスとかギブソニアンとかそういうヤツね.
 簡単に言うと,アフォーダンスっていうのは「個体が行動を調整するために利用可能な環境内の資源」です.人間を含めた動物は,このアフォーダンスを直接知覚しながら生きてるっつー訳です.この見方はもともと知覚・運動分野の心理学者が扱うことが多かったのですが,実はJJギブソンのパートナー,EJギブソンなどが,JJの死後,発達分野への展開を試みていた訳ですね.さらに,リードは思考や談話をも生態心理学の射程に納まることを論じています.今回初めて知ったのですが,どうやら生態心理学は,概念の上で社会文化的アプローチを越えて広がっており,しかも科学的な実験と観察の重要さを何よりも重んじているということが分かってきました.ああ,この本*1早めに読んでおけばよかった(^_^;) 知覚は専門じゃないから関係ないやって思っていたんですよね.油断は禁物です.
 ということで,僕は今日からギブソニアンに転向です.いや,正しくはベクトルの方向性は同じなので,ギブソニアンに「転校」ではなくて,「進学」ですかね?
 次回,あるいはこの続きで,じゃあ議論過程を読み解く上で,生態心理学がどういう利点があるかを考えてみたいと思います.

*1:アフォーダンスの心理学―生態心理学への道