議論過程に見られる「べき乗法則」とは

 暑くて頭がとろけつつあるので,リハビリのためにも,ひさびさに議論について書きます.

 今日のテーマは,議論過程の中に見られる数学的な法則性をどのようにして見出すかという話に関わります.

 我々が議論をする時間の大部分は退屈なものであったり,非生産的であったり,知識の一方的な伝達だったり,「こんなことあったんだよね〜」的な話だったりするのが普通ではないかと思います.いくら「議論が大事だ」とか言ってても,いつもそんなに良いアイデアなんて浮かびませんよね.でも,たまに「っぽんっ」と,話が発展したり,意外な発見したりする訳ですよね(ところで,これは物理学では,相転移と呼ばれる現象に似ていているのではないでしょうか.洞察問題解決の認知心理学的研究ではたまに引き合いに出されています).

 でも,まあ要するに,大部分の議論はあんまり冴えなくて,たまにもの凄い冴える訳なんですね.こういうたまにもの凄い人や物事があって,他の大部分はたいしたこと無いみたいなものごとの分布っていうのが今,物理学,社会学,経済学,工学などなどいろいろな分野で注目を集めています.例えば,都市の人口や地震の大きさ,企業の大きさの分布などは典型例で,大多数のケースは非常に小さな特性をもっているのに対し,ごく少数のケースがもの凄く大きな特性を持っています.これらは,対数を両軸に設定したグラフで直線になるような分布「べき分布」と呼ばれる傾向を持っていることが知られています.詳しくは下のURLをご参考に.

 横浜市立大学理学部機能科学科・大月研究室によるべき乗則の説明
 http://statphys.sci.yokohama-cu.ac.jp/power.html

 つまり,議論で良いアイデアがでる頻度みたいなものも,べき分布に従ったりなんかしていないのかな?というのがここで書きたいことなんです.具体的にどうやってしらべるのか,いまのところ見当もつきませんが.

 なんでこんなことを考える必要があるかっていうと,今物理学を初めとして,これまで科学がのっかってきた大前提がちょっとしたメジャー・チェンジをしつつあるんですね.例えば,正規分布.心理学を初めとして,世の中のものは正規分布に従いますよっていう理論的前提があって,それをもとに分散分析とか,質問紙法とか,成績評価だとかを心理学者はやってる訳ですが,それほど正規分布っていうのはユニバーサルじゃないよっていうのが,最近経済とか物理とかでは普通になってきてる訳なんですね.でも,心理学の教科書にはそんなことは書いてありません.しかし,複雑なものを理解するうえでは,実は正規分布ではない,たとえばべき分布のような理論的前提が必要になってくるので,これからはどんなものが正規分布に従っていて,どんなものが他の分布にしたがっているのかを知り,それに従って研究を進めないと,そこに本当は存在する規則性を見逃してしまうかもしれません.ということで,議論過程に存在するべき分布とは一体何なのか,っていうことが僕の今の1つの関心な訳です.

 <議論過程に見られるかも知れない「べき分布」候補>
 ①出された意見の有意義さの程度とその出現頻度→これはアイデア生成全般に言えるだろう
 ②
 ③発言数の多さと発言者の人数との関係
 ④
 ⑤
 ⑥
 
PS 今日知ったすばらしいお言葉☆ 「着眼局大着手局小」最近流行ったことでこれに近い言葉は,Think glogally, act locallyってことだけど,もうちょっと意味が深いと思います.研究するにあたって,いや人が生きていく上で本質的なことですね.これを忘れちゃうと神経症になっちゃいますな.