うどんの政治学?
今日のエントリーは議論学ではなく,うどん学です。うどん学は,最近できた学問領域で,讃岐うどんのご当地である香川大学の教育学部には,うどん学科があります。なんてね。
さて,今日こんなニュースを見かけました。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kansai/news/20060902ddf041040004000c.html
UDON:ルーツ求めシルクロードへ 香川県観光協会、5日から訪中
◇「讃岐」を世界に発信
香川県観光協会は5日から、うどんのルーツを訪ねて中国西域などシルクロードを巡る官民の訪中団を派遣する。同県出身の本広克行監督の最新作映画「UDON」がヒットする中、弘法大師空海が広めたとされるうどんの原形となった料理を探し、讃岐うどんを世界に発信する新たなヒントをつかむのが狙いだ。
後略
(毎日新聞 2006年9月2日 大阪 夕刊)
まあ,香川に住んでいたら,特にひっかかるところは無かったかもしれない。しかし,ここ福岡では,うどんの発祥は,博多ということになっている。いったいどっちなのだろう? 香川のうどん屋の壁面にたまにかかっている,うどんについての解説には,博多がどうこうという話は一切みたことがない。もしかしたら,香川では,「博多発祥説」は禁句なのかもしれない。ということで,ちょっと調べてみました。
まずは博多の言い分から。
博多には,なんといっても,うどん発祥の寺,承天寺があります。ここにはなんと石碑まであります。聖一国師というお坊さんによってたてられたお寺で,中国より日本に伝えられたとのことです。
http://averse.hp.infoseek.co.jp/kan/ka006.html
http://www.tvq.co.jp/ana/hakatanavi/2006/04/1.html
他方,香川では,郷土の星,空海が唐より持ち帰ったのがうどんということになっています。
http://iroha-japan.net/iroha/B02_food/03_udon.html
中国から持ち帰ったのならば,いくら空海の郷土愛が強かったとしても,まずは長崎か博多に伝来するのがものごとの順番では? これはやはり博多有利か?
しかし,よくよく考えてみると,博多発祥説もけっこう怪しい。まず,承天寺にある「饂飩蕎麦発祥之地」の石碑。これは結構あたらしいもので,これをもって証拠とできるような代物ではない。もしかすると,ライバルに対する牽制として最近建てられたのかも。また,承天寺が建立されたのは,1242年。これに対して,空海は,西暦774-835に生きた人である。かなり空海のほうが古い。しかも,既に奈良時代には,うどんのルーツと言われる唐菓子の一種「こんとん」が日本にあったらしい。やっぱり香川が発祥なのか?しかし,そもそも,九州地方をスルーして,なにかが香川に伝来するなんてことがありうるのか?てんでわかりません。中国まで行ってルーツをたどるのもいいんですけど,そのあたりはっきりしたことは分かっているのかな?
ともかく,歴史的な経緯がよく分からないから,香川と博多はお互いのことには言及しないという政治的な力学が働いているような感じもする。こういうのって,「邪馬台国はどこにあったのか?」というような考古学的論争にはならないんでしょうかね?
wikipediaにも,はっきりとしたことは書かれていないもよう。うどん学で博士号を取った方のご意見をお待ちしています。